学びの本質を考える
今回は、学びの本質について考えてみましょう!
1.學の語源
学という文字の、旧字体は「學」と表記されます。
伝統校などでは、今でもよくこの字が採用されていますね。この字の意味を考えてみましょう。
まずは、下の方にある「子」ですが、これはいわゆる「凡夫」、普通の人、素人などの意味になりま
す。続いては、その上の、ワ冠。これは、場所を表すものです。学校でいえば、キャンパス、企業で
言えば、会社の建物などを示します。
その上の、××のところは、漢字の「交」になり、出会いを意味しています。
また、その横にあるギザギザの形のものは、ものを「引き上げる」という意味になります。
吉本興業などの、興を思い起こすと、想像しやすいですね。
つまり、學校は、素人である新入生が、キャンパスという場所で出会い、お互い切磋琢磨しながら
育っていくところという意味になります。
ことを考えると、書きやすいからと言ってなんでも、略字にしていくのはどうかなと思います。
伝統のある地名なんかも、北区や南区などに変更するのは、もったいないし、寂しい感じですね。
次に、勉強という文字について見てみましょう。日本語では、STUDYと言えば、この文字を当てま
す。勉強を、訓読みすると「勉めて強いる」となり、きわめてきつい感じなります
しかし、お隣中国では、「学習」に近い意味になります。学習なら少し和らぎます。
さらに、ハングル圏になると、これが「工夫」に近い意味になります。
同じ「STUDY」でもだいぶニュアンスが違ってきませんか?STUDYを「工夫」する学問ととらえれば、
表記を変えると、勉強は、「工夫楽」に代わります。
勉めて強いられるより、はるかに気持ちが軽くなりませんか?
つまり、學びの本質は、「工夫しながら楽しむこと」、「楽しみながら工夫する事」
はないのでしょうか?
受験競争とか、出世競争などの様に、ライバルを蹴落とすために、自分の偏差値や成績を向上する
事だけに目を向けるような、学び方は本来の在り方とはかけ離れているようです。
もっと前向きに、知らないことを追求していく事に、「喜び」や「わくわく感」を味わえるよう
な有意義な「學び」をしていきたいのものです。
2.練習と稽古
武道や茶道など、「道」のつく学びの世界では、「練習」という言葉は使いません。
常に、「稽古」という言葉を使います。華道や茶道などを習う場合には、「お稽古事」と称しますね。
「稽古」の出典は、中国の五経の一つである「書経」になります。
日本では、「古事記」に登場します。
その意味合いは、「古(いにしえ)」を、「稽(かむがへ)る」という深い意味になります。
先人たちの、培ってきた想いや姿を思い浮かべつつ、その深い意味や意義を、
心身共に引き継いでいくという意味になるでしょうか。
私自身も、中学から40年以上にわたって、断続的ですが剣道を続けています。
礼に始まり、礼に終わるのが「稽古」の常です。
稽古の前には、必ず道場の長が、一言挨拶をされます。長年の鍛錬の深さを感じる温かいお言葉が心にしみることも
多いのです。また、稽古の後は、必ず稽古してくだった先生方、それぞれの前まで行き、
一人一人と挨拶の後、指導を受けます。
その端的ではありますが、ちょっとした会話の中に、奥深いものを感じることが多くあります。
日ごろ、何気なく使っている様々な言葉の、本来の意味や奥深さを改めて感じて
もらえたら嬉しいです
3.研修と修行
企業などでの教育現場を見ていると、一般的には「研修」という言葉が日常的に使われています
「研修」の意味合いは、「職務上必要とされる知識や技術を高めるために、ある時間特別に勉強や実
習をすること」とあります。
一方、最近はあまり使われませんが、「研鑽」となると、「学問などを深く極めること」
となっています。
私自身、ここ20年間教育研修の現場にいますが、どうも効率やスピードなどが優先され、
「研鑽」のような学びの形態が次第になくなってきている気がしています。
経営者は、常に「人財」が重要だと言われています。一方で、目先の利益優先で、
長い目で見た人間の「研鑽」的な教育が疎かになっている気がしてなりません。
現在の、コロナ禍でも、経営が厳しくなると、
すぐに「リストラ」「雇止め」などという文字が踊ります。
企業存続のための、苦渋の決断ではあるのでしょうが、何かしら釈然としない部分も残ります。
IT主流の時代になり、コロナの影響でテレワークもどんどん進化。
ソーシャルディスタンスもさらに進み、人とふれあいや緊密感がなくなっていく中で、
心身の病も増加傾向にあります。
効率だけ優先しながら、一番大事な人財をつぶしてしまっては、元も子もありません。
今、こういう時だからこそ、長い目で見た心技体の「研鑽」の場を言う形の、「教育」に目を向けなればいけないような気がします
世界でも、「SDGs」が盛んに叫ばれています。その中にも、「質の高い教育を皆に」とか、「働きがいも、経済成長も」、「すべての人に健康と福祉を」という項目がみられます
「學」の本質をしっかりととらえ、一番大事な「人」に対しての、
「教育」「研鑽」の在り方が、少しでも変わっていく事を願うばかりです。