AI時代における教育の見直し

第1章 現状の課題

最近、生成AIを悪用した様々な犯罪が横行しています。

このような、社会風潮に不安を覚えておられる方々も多いのではないでしょうか。

経営者や人事担当の方々からも、

「便利さの裏で、人の判断力が弱っているのではないか」という声をよく耳にします。
まさにそこに、今の私たちが直面している

“教育・研修の空洞化”の本質があるように感じています。

近年、DX推進の流れとAIの急速な進化により、

業務の大半が効率化されました。

通知も資料作成も分析も、AIが高速で処理してくれます。

しかしその一方で、“AIがやってくれるから”と、

人が思考する機会がどんどん奪われていることに、

私たちは気づきにくくなっています。

例えば、ある企業では新人研修のレポートをAIに生成させる事例が相次ぎ、

内容がどれも同じで“本人の言葉が見えない”という課題が生じました。

「学び」を形だけで済ませてしまうと、経験が身にならず、

やがて判断力や倫理観が育たなくなってしまいます。

これは、現場にとって致命的なリスクです。

さらに、AIに頼り切ることで、人と人の対話が減っている点も大きな問題です。

心理学や組織開発の現場に長くいる私としては、

対話が失われると職場の関係性の質が急速に落ちることを強く懸念しています。

コミュニケーションの中で育つ“察する力”や“表情の変化に気づく力”、

つまり人間の感性が育ちにくくなるからです。

まして、乳幼児のころからこの世界にいる子供たちの

将来を不安に思われない方はいないでしょう!

つまり今、AI社会の影に隠れて進行しているのは——
「思考力の衰退」「倫理観の希薄化」「対話の消失」
この3つの課題だと、私は実感を持って感じています。

だからこそ、今ほど“本来の学び”の再構築が求められる時代はありません
あなたの会社で働く人材が、AIに振り回されず、

AIを使いこなす側に立つために、

私たちはどの方向に舵を切るべきなのでしょうか。

八尾です 
八尾です 

第2章 あるべき方向性

AIと競争するのではなく、AIと“協創”する。
私はこの考え方こそが、これからの教育・研修の中核になると考えています。

そのためには、最初に

「AIが得意なこと」と「人が得意なこと」を明確に分ける 必要があります。

AIは“処理・検索・最適化”において優れています。

しかし、“意味を理解し、現場の文脈で判断し、人を導く”という領域は、

まだまだ人間の役割です。

むしろ、この部分を磨くことこそが、これからの教育の中心になるべき

だと私は強く感じています。

最近、ある企業の管理職研修で、

私は参加者に「部下の育成で一番大切にしていることは何ですか?」と問いかけました。

多くの方々が「傾聴」「対話」「信頼関係」と答えられたのですが、

興味深いことに、これらはAIが最も苦手とする領域なのです。
つまり、あなたの組織が磨くべき能力は“人間だからこそできる力”なのです。

では、どう磨くのか。私は3つの方向性を提案しています。

八尾です 
八尾です 

1.AIを使い、思考を深める設計にする

AIに答えを求めるのではなく、AIを“問いを深める鏡”として使うのです。
例えば研修では、AIが示した分析や意見に対して、

「私はどう考えるか」「私の経験とどう違うか」を必ず言語化させます。
これにより、“自分で考える力”が維持され、むしろ鍛えられます。

2.対話中心の育成に戻す

オンライン化が進んだ今こそ、対面での対話が重みを増しています
人の表情や間の取り方、空気感を感じ取る力は、AIには再現できません。
管理職研修や新人教育では、対話・ロールプレイ・実践の比率を意識的に高めるべきです。

3.倫理観・判断力を育てる教育

AI犯罪が増加する今、企業として“善悪を判断する力”を社員に育てることは、

これまで以上に重要です。
「なぜそれをしてはいけないのか」「その行為は誰を傷つけるのか

といった倫理判断は、AIでは代替できません。

これら3つを押さえることで、AIを恐れるのではなく、

AIを味方につけながら人材を育てる“協創の教育体系”が実現できます。


第3章 心技体(知育・体育・徳育)の原点へ戻る

私は剣道を続けて50年以上になります。剣道の理念は

「剣道は剣の理法の修練による人間形成の道である」と書かれています

また、剣道修練の心構えとして「心身の練磨を通じて旺盛なる気力を養い

剣道の特性を通じて礼節を尊び、信義を重んじて誠を尽くして、

常に自己の修養に努め、以って国家社会を愛して、

広く人類の平和繁栄に寄与せんとするものである」とされています

この理念の根っこは、「気」「剣」「体」の一致

“心技体”の統合としての人間形成という考え方は、

企業教育にもそのまま当てはまります。
AIがどれだけ進化しても、人を育てる本質は変わりません

■心(徳育)—人としてどうあるべきか

AI時代こそ、“心”を育てる教育が必要です。
正直さ、誠実さ、責任感、そして倫理観。
これらはAIが教えることはできません。

「AIが作った資料だから、自分の責任ではない」

ということは、当然通用するはずがありません
AIも同じで、あくまで“道具”なのです。

稽古終わりに、ご指導してくだった先生の前で正座して

お言葉を頂くのは、礼節を超えた深い意味があります

■技(知育)—考える力・技術を磨く

AIは知識を供給してくれます。しかし、

知識をつなぎ、自分の言葉で整理し、行動につなげる力”は人間だけが持つものです。
だからこそ、AIに頼るほど、“思考の筋肉”を鍛えるトレーニングが欠かせません。

研修では、AIが答えを出した内容を基に、

「あなたならどう判断するか」を必ず問うようにしています。
この一手間が、知育の核心です。

■体(体育)—感性と行動が人をつくる

身体を動かすことは、人の感性を呼び覚ます最も確かな方法です。
剣道の足さばき、呼吸、気合、構え、などなど、
そのどれもが“自分を整える”訓練になっています。

企業研修でも、ワークやロールプレイ、体を使った学びを積極的に取り入れると

“腹落ち感”がまったく変わります。「腑に落ちる」という独特の感覚です
知識だけを頭で理解しても、身体が伴わなければ実践につながりません。


AI時代だからこそ、私たちはもう一度“心技体”という原点に立ち返り、

人としての学びを再編する必要があります。
そしてその先に、AIと人間が真に協創できる未来が広がっていくのだと、

私は確信しています。

体育が、「怠育」になっては本末転倒なのです

八尾です 
八尾です 

心技体(知徳体)の三位一体が教育の原点です